ゆるり民藝 ―東北に暮らして(25)

2016年1月19日(火) 河北新報 朝刊くらし面掲載

着物
気分湧き立つ年初め

久米島紬に叔母から借りた帯。初春の息吹を感じさせる色を帯締めに

久米島紬に叔母から借りた帯。初春の息吹を感じさせる色を帯締めに

成人式の日、乗り合わせた地下鉄には、あでやかな晴れ着姿があふれていました。夏の成人式だった自分には、ちょっとまぶしいくらいです。

松の内をすぎたころお目にかかった宮城県民芸協会の先輩は、鹿(か)の子絞りに金糸の刺しゅうが施された半襟が印象的でした。協会には着物を日常着にしている方々がおられ、NHK連続テレビ小説「あさが来た」に出てくる帯結びをさりげなく取り入れるなど、楽しんでおられます。

着物への興味がぐっと増してきたのは、協会のご年配の方から「民藝に半世紀お世話になったお礼として着ていただけませんか」と4年前に久米島紬(つむぎ)を頂いてからです。沖縄らしいツバメのかすり模様に、鉄分を含んだ土で染められた泥染めの赤みがかった黒地。20年程前に日本民藝協会夏期学校で出会った久米島の紬職人の方から求められたと伺いました。

久米島といえば沖縄諸島の西端にある島。プロ野球東北楽天イーグルスの春季キャンプ地でもあります。久米島紬を調べてみると、貢ぎ物の納布として発展し、山形県の「米琉(よねりゅう)」と呼ばれる米沢琉球紬に影響したようです。 

頭で知識を得ても、さて着ようと思うと分からないことばかり。着物と帯の合わせ方、季節や場面に合わせた着こなしなど、どうすればよいのか。いちから教えていただこうと訪ねたのが、協会でも縁のある「きものゝ老舗にしむら」さんです。

相談に乗ってくださる西條ゆり子さんは、手持ちのものを生かしながら、きりりと引き立てる帯締めや帯揚げなど、好みにも予算にもぴたりと合うものを目の前に並べてくださいます。「その色もいいし、こちらの色も合う…。どちらもステキだけれど、好きなのはやっぱりこちらかな」と迷っている時間がたとえようもなく楽しいのです。

着ることもおぼつかない、半襟をつけるにも時間がかかる。それでも、ことしはどの取り合わせにしようかと準備をしていると、新年を迎えた喜びが湧いてきます。お正月を指折り数えて待つことはなくなりましたが、着物に袖を通す日まで、もう幾つ寝るとの気分です。

着物が体になじむのは先の先になりそうですが、泥染めが枯れた色合いになるころには、立ち居振る舞いも着物にふさわしくなっていられればと願う着物4年目の年初めです。







TopBlogMailLinkFacebook
Copyright (C) 2008 Miki Otani. All Rights Reserved.