ゆるり民藝 ―東北に暮らして(17)

2015年5月19日(火) 河北新報 朝刊くらし面掲載

松島で全国大会
白石和紙 万祝で歓迎

松島で全国大会〜白石和紙 万祝で歓迎

白石和紙に巾着型を切り抜き、手刷りしたプログラムを参加会員に

手仕事の美しさを生活に取り入れ、心豊かに暮らしたい人たちが集う会があります。全国30地域にある民藝協会で構成される日本民藝協会です。その全国大会が5月30日、31日に松島で開催されます。今回で69回を数え、宮城県での開催は26年ぶりです。

会員は、作り手、使い手、その両者を結ぶつなぎ手の三者からなり、開催地の会員が大会を企画運営します。土地のものでいかにもてなすか、趣向が凝らされる手作りの催しです。

これまで参加した民藝協会の全国大会や夏期学校では、絹織物の産地である新潟県十日町で着物姿の会員に案内され、栃木県益子での懇親会では濱田庄司作の直径1b近い大皿の数々に料理が並ぶなど、一般の観光とは異なる濃密なプログラムが組まれていました。

宮城大会の開催が決まったのは約2年前。早くから幹事会を開き、事務局の一員として準備に加わってきました。当初は、宮城の見どころや郷土芸能、食など、さまざまな案が挙がる回が続きました。さながら、民俗学者の宮本常一が昭和20年代に対馬で経験した、意見がまとまるまで延々と続く寄り合いを思わせる、効率とは縁遠い流れです。そうとばかりもいかず、時間との調整を計りながら進めた準備はいま、最終段階に入っています。

全国からの会員約120人に配るプログラムの表紙には、白石和紙を付けました。宮城県に伝わる切り紙にちなんで切り抜き、民藝の文字をステンシルのようにかっぱ刷りしたのも会員です。

大会当日、舞台には年代ものの堤焼きの甕(かめ)に花を生け、会場内には大漁の祝い着である万祝(まいわい)を飾ります。懇親会には、東日本大震災から立ち直った石巻市指定無形民俗文化財の大室南部神楽に子ども神楽も登場します。

一般公開となる5月30日のトークイベントでは、日本民藝館の深澤直人館長と東北の若手工人が民藝とデザインについて語ります。もともと全国大会は、民藝に長年親しんできた人たちが語り合い、親睦を深める場。かなり飛躍した意見が交わされるかもしれません。

実は今年は全国大会に加え、日本民藝夏期学校も東北で行われます。会員ではないけれど、民藝の本質に触れたいという方は、7月17日から19日に開催される秋田県角館町での夏期学校も併せておすすめします。







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