星座や誕生石とおなじように、その月ごとの誕生色(※1)もあります。1月は「想紅」、2月は「恋待蕾」、3月は「夢宵桜」といったように。日本の伝統色をもとにしたこの誕生色は、十日町の織物工業協同組合が昭和56年に定めたものです。
十日町といえば、江戸時代には越後縮、幕末以降は絹織物の産地として知られ、染めと織の盛んなところ。その町で、2008年夏に日本民藝協会夏期学校が行われました。
「織りと染めの里を訪ねて」と題した内容で、とくに関心があったのが染めのほう。色、材料、工程を見たくて訪ねた十日町でした。
糸屋のご主人を案内役にうかがった染めの工房は、草木染めをされている岩田さんご夫妻。玄関先の瓶には、染めにも使うハンノキの葉が生けられ、奥の板の間には天井からさまざまな染糸が下がっています。
淡紅の糸はアカネ、茶はスギ、黄色はネムノキ、緑はヨモギで染めたもの。色ムラを防ぐため、少なくとも4度は染めるのだそう。繰り返し染めることで、色も深みを増していきます。染液の温度の高い、低いによっても色が異なり、発色と色止め効果のある媒染剤によっても、色は異なってくるといいます。媒染剤とは、たとえば、鉄やアルミニウム、みょうばんといったものになります。
日頃は手をかけて色を定着させていく草木染めを、研修ではわずか数時間で仕上げる早技。体験する側より、講師を務める方のほうがヒヤヒヤという中での染め実技となりました。
ハンノキ、クルミ、ヤマザクラの染液から好きな色を選べたので、やわらかい色みになりそうなヤマザクラに。水にさらした白い絹地を、褐色の染液につけてぐつぐつ。媒染剤のみょうばんにしばらく浸け、水で洗い落として、特急仕上げの染めあがり。意外に深い伽羅色(きゃらいろ※2)に仕上がりました。
ほんのさわりの体験でしたが、布に色がしみこむように、すーっと頭と心に色がなじんでいきました。見ることは、なにより大切と感じた十日町の夏です。
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(※1 誕生色)
1月 想紅(おもいくれない)
2月 恋待蕾(こいまちつぼみ)
3月 夢宵桜(ゆめよいざくら)
4月 花舞小枝(はなまいこえだ)
5月 初恋薊(はつこいあざみ)
6月 憧葛(あこがれかずら)
7月 咲初小藤(さきそめこふじ)
8月 夢見昼顔(ゆめみひるがお)
9月 恋路十六夜(こいじいざよい)
10月 想紫苑(おもわれしおん)
11月 恋染紅葉(こいそめもみじ)
12月 勿忘菫(わすれなすみれ)
(※2 伽羅色)
伽羅の香木で染めたような、
やわらかい黄褐色
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