ゆるり民藝 ―東北に暮らして(18)

2015年6月16日(火) 河北新報 朝刊くらし面掲載

型染めの風呂敷
部屋の雰囲気 楽しく

型染めの風呂敷〜部屋の雰囲気 楽しく

肌触りのよい木綿の風呂敷。型染めの模様が、楽しい空気を生む

花鳥風月でもなく、インド更紗(さらさ)のような繊細な型染めでもなく。フィンランドのマリメッコ社のデザインを思わせる大胆な模様と色に引かれて求めた、型染めの風呂敷があります。

訪問先に菓子折りを持って行くときや、出張時の衣類を包むとき、幾枚かある風呂敷の中から選ぶことが多いのが、鮮やかでいて、俗でない色調の、このモダンな風呂敷です。

包む、飾る、敷く以外に、覆う使い方があったと気づいたのは、あるお宅に伺ったときのこと。部屋のあちらこちらが布で覆われ、楽しいリズムを生み出していたのです。

布の使い方を見習って、資料を入れたボックスファイルやトレーの目隠しに風呂敷を掛けてみると、心地よい空気を醸し出すようになりました。

型染めの風呂敷を作っているのが、岩手県紫波町の小田中耕一さんです。型染めは中国や朝鮮半島から伝わったとされ、日本では奈良時代から木型を用いて作られていたと考えられています。型絵染の人間国宝、芹沢C介の元で学んだ小田中さんは、下絵を描き、柿渋を塗った和紙を彫って型紙を作り、布に重ねて防染のりを塗り、染色します。

斬新さを感じた模様は、昭和47年ごろに小田中さんが作った服地の型紙を用いたものでした。

模様を考える際には、形あるものからイメージする場合と、言葉など形のないものからイメージする場合、そのどちらにも当たる場合があります。

小田中さんは「気持ちいいな愉快だなと思われるものを」と、無意識に心地いいと感じられる模様を生み出したいと考えています。これまでに、渋紙を折って紋切りのように切ることから偶然に生まれた模様、洋画で見た波のワンシーンから生まれた三角が重なる模様、深夜ラジオの言葉から浮かんだ模様などが生まれてきました。

紅型の色調を取り入れた紅色は、芹沢譲り。古代から使われてきた防虫効果があり色あせにくい弁柄で染めた、実用に即した美しさです。

「型染めは、天気がいいとはかどる。川の水があると染め物がきれいに洗える。自然から無償で頂いているもの。東に向かって手を合わせるわけではないけれど、宮沢賢治じゃなくても心の中にそういう気持ちはあると思う」

自然に沿ったありようが、長く共に暮らしたくなる模様を生んでいます。







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