夏休み、子育て中のお母さんはラジオ体操への送り出しやプールの監視、お盆の帰省など、いつもにも増して慌ただしくなります。
仙台市若林区に住む中1と小1の姉妹のお母さんも、子育てのただ中。ゆっくり座って食事を取ることも、自分の時間を持つことも、ちょっぴり我慢の日々です。気分を発散するために5年ほど前から始めたことがあります。
自分だけのおやつ時間です。お菓子が入ったスズ竹の籠(かご)は、ふたも入れ物にして二つ並べて布を掛け、キッチンカウンターの奥にさりげなく置いています。
「子どもたちの目が届かない高さに。籠がいい目隠しになっているんです」
籠を取り出すのは、子どもたちや夫が起き出す前の朝5時ごろか、子どもたちが家に帰ってくる前の午後2時ごろ。籠の中には、夫に頼んで出張先から買ってきてもらった「見た目が愛らしくて、ひと粒だけで幸せを感じられる」手作りの金平糖(こんぺいとう)のラムネ味やしょうが味、塩味などが詰まっています。その日の気分に合わせて口に含み、冷煎茶や炭酸水でほっとひと息。
「一人で、ぼぉーっとする。ただそれだけのことなんですけど、その時間を持てたかどうかで、家族への声のトーンが違ってくるんです」
籠はまだ結婚する前に求めた、岩手県一戸町で作られたお弁当籠です。竹の籠が好きで少しずつ増えてきましたが、「大分で作られた籠には、バッグなどを入れて。お菓子は岩手のスズ竹に。断然柔らかくて手に優しいので」と、かっちり堅めの真竹と、ふんわり弾力性のあるスズ竹を使い分けています。
籠の材料にする竹には、太い竹と細い笹があります。南方系の真竹は九州で、笹は東北で使われています。笹の一種であるスズ竹の1年物は、直径6、7_。皮をむき、節を取り、肉をそぎ落とし、数_幅の細いひごで編んだ、しなやかさが特徴です。
網代編みの籠は、子どもも「編み方がかわいらしい」と感じるもの。その中に特別なお菓子があることを、長女は知っていました。籠に手を伸ばすことがなかったのは「お母さんが楽しみにしているから」。
キッチンに置く籠も「ほかの箱ではちょっと」とこだわりが増してきた中1生。
「将来は自分の籠を持ちたくて、貴重品やケータイ、金平糖も入れたい」
ちゃんと母の背を見ています。