ゆるり民藝 ―東北に暮らして(40)

2017年4月18日(火) 河北新報 朝刊くらし面掲載

篠竹とすず竹
適材見極める眼と技

岩出山の浅ざるは、篠竹。宮床の箕と鳥越の弁当かごは、すず竹

岩出山の浅ざるは、篠竹。宮床の箕と鳥越の弁当かごは、すず竹

島根で過ごした子どものころ。隣家のおじいさんが細い竹ひごで小さな花かごを編んでくれました。編み目が六角形の六つ目編みがかわいらしく、部屋に飾っていました。

竹にもいろいろ種類があると知ったのは、東北で暮らし始めてからです。温暖な西日本では太い真竹系、真竹系が育ちにくい寒冷な東北地方では細い笹系が、竹細工に使われています。その笹系にもさまざまあります。

ふと疑問に思ったのは、この連載で紹介した「宮床の箕(み)」のときです。宮城県大和町宮床の作り手の方からは「すず竹」と聞きました。ですが、本や雑誌のほとんどが宮床の箕や肥料振りかごの材料を篠竹と紹介しています。「すず竹(篠竹)」としているものもありましたが、竹細工の産地である宮床、大崎市岩出山、岩手県一戸町鳥越の作り手の方々は「篠竹とすず竹は全然違う」と口をそろえます。

どういうことだろう?  竹細工に用いる竹に詳しい東北大学植物園の小林和貴さんを訪ねました。

「篠竹は植物学的にはメダケやアズマネザサなどの通称で、岩出山で使っているのはアズマネザサです。見た目の違いは、稈鞘(かんしょう)と呼ばれる竹の皮が、節と節の間の半分までしか覆っていないのがアズマネザサ、すず竹は全て覆っています」

アズマネザサは3〜4bと大きく、すず竹は2bほど。節の大小、節の間隔にも違いがあるといいます。岩出山の大崎市竹工芸館にある見本を比べると、篠竹は直径約1a、すず竹は約5_と太さも違います。

竹細工指導員の千葉文夫さんは「どちらも山に入って採りますが、篠竹が多く、すず竹はその1割くらい。篠竹も1年目ならどれでも良いわけではなく、同じ山に生えていても良い悪いがあって」と山に入るとき確かめてから切り始めます。

岩出山では1年目の篠竹で、ざるやかごを。宮床では2年目の秋以降のすず竹で、箕や肥料振りかごを。鳥越では1年目の秋以降のすず竹で、弁当かごや文庫の胴を、夏に採った柔らかいもので縁を編みます。

ひごになると篠竹1年目とすず竹2年目の見分けは難しいものですが、ざると箕に触れてみれば分かります。堅めの篠竹と、しなやかなすず竹であることに。

編み目の美しさ以前に重要なのは、最適な材料を見極める眼と下準備です。土地に受け継がれた知恵が、優れた技を支えています。







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