うすこういろ − 薄香色
香木で染めた生成り色
季節にも、色があります。
青春、朱夏、白秋、玄冬というように。
その白い秋にふさわしいお菓子「光琳菊」です。
尾形光琳風の大らかな描き方で
情緒をあらわしたもの。
おなじ銘をもつお菓子は多くありますが
めずらしかったのが、このどっしりとした形です。
たぶん琳派の先駆けであった
本阿弥光悦が手がけた丸みのあるすずり箱に
ちなんだものでしょう。
じつは、このお菓子には
もうひとつ目を引くものがありました。
薄香色の下、こし餡にとどくまで
うっすらと淡紅がかっていました。
もしかして、「香」のかさねの色目かも……。
あれこれと考えをめぐらせば
ひとつのお菓子にも、秘かにこめられた思いが多いもの。
これまで、どれほど見過ごしてきたことでしょう。
奥ゆかしい色あいが
かえって気づかせてくれました。
【薄香色】
|
|
ほんのり上品な生成り色。丁子(ちょうじ)で染めた
「香色」の薄いものです。丁子はカレーなどにも使う 香辛料のクローブのこと。その丁子で染めた布が香り をたたえていたことから、香色の呼び名がついたのだ そう。『源氏物語』にも、丁子染めとして登場します。 |