くれないぎく − 紅菊
紅菊の花と葉をあらわすかさね色
ある年のお正月。
父と母と出かけた出雲民藝館の庭先で
目にとまった赤い実。
南天でも千両でも万両でもない赤い実は
母から「藪柑子(やぶこうじ)」だと教えられました。
いっしょにまわった足立美術館も温泉もよかったけれど
意外に覚えている旅先での出来事は
そんな、何気ないやりとりです。
親子で旅に出る機会は、なかなかありそうでなく
最近は、それぞれで過ごすお正月になっています。
この時季、和菓子屋さんに並ぶ「やぶこうじ」を見ると
出雲で見た、あの赤い実を思い出します。
帰りの車中で撮った、父と母の笑顔とともに。
このお正月、父と母はどんなふうに過ごすのだろうと
少々気にかかりつつ
いよいよ明日から師走。
年明けまで、日々が走り抜けていきそうです。
【紅菊】
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紅菊の花と葉をあらわす、「紅」と「青」(かつて
緑のことを青と表現していました)の二色によるか さねの色目。中国から伝わった菊は、平安時代にお いて黄と白が主流でした。いまよく目にする紅菊は 品種改良されたもの。このかさねの色目も後世に 生まれたと考えられます。菊をあらわす色目は10 種もあり、すでに紹介した九月菊もそのひとつです。 |