ふかみどり − 深緑
生命力をたたえた濃い緑色
静かなお菓子です。
ひっそりとした深い森を思わせるような。
といっても、菓銘は「玉藻羹」。
湖底にたゆたう藻を表わしているのでしょう。
何年も前から和菓子店の店先で
目の端に映りはしても
なかなか求める気にならなかったのは
抹茶と小豆の二層の水ようかん
だとばかり思っていたからです。
それがまったく予想していなかった
甘味が織りなす甘美なお菓子でした。
香りと苦みのきいた抹茶の下には
さっぱりしたほうじ茶羹のようにも感じる
波照間産の黒糖をつかった黒糖羹。
そして奥底には
とろんとしたこし餡が隠れていました。
見ための静けさと
饒舌な味わい。
忘れられない味をもう一度と
後日行ってみると、その日は完売。
ああ残念と思いながら
定禅寺通りのケヤキ並木を見上げると
いつの間にか葉色は、もう深緑。
ほんとうに和菓子の奥深さを再認識した
夏の夕暮れでした。
【深緑】
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