わかな − 若菜
匂いたつ色
ぴょんと飛んできそうな、
いたずらっぽい表情の「雪うさぎ」。
生き生きと感じられるのは、
初々しい色の耳をしているからでしょう。
この時季の緑といえば、
セリ、なずな、ごぎょう、はこべら、
ほとけのざ、すずな、すずしろ、
といった春の七草になります。
なかでも思い出すのは、
子どものころ摘みとっていたセリ。
ちらちらとした小さな葉が、か細い茎からのびるセリは、
いかにも心細げですが、
口に含んだときの香りは、
はっとするほど春のきざしが感じられます。
色だけでなく、香りも匂いたつ、
まるで、いろは歌の
「色は匂へど」のようです。
【若菜色】
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芽吹いたばかりの淡い緑色が、若菜色。卯月のころに
は、みずみずしい若草色。月になると、苗代皐から田 に移す早苗の若苗色。おなじ緑であっても、数カ月の 間におこる緑のわずかな変化を、平安人は冴えた感覚 で感じとっていたのでしょう。 |