しょうぶがさね − 菖蒲重


菖蒲の葉と花穂を思わす、緑と黄のかさね色


まったく異質に見えるのに、
どこか似ているような……。
直感は、意外にあたっているようです。

このお菓子「尾瀬の春」に添えられた水芭蕉と、
そこに見つけた菖蒲のかさね色のことです。

菖蒲といえば、するりと伸びた剣のような緑葉。
尚武や勝負に通じるため
男子の成長を祝う端午の節句は、菖蒲の節句と言われるほど
たけだけしいものの象徴です。

水芭蕉は、花穂を包む大きな葉が白い花に見える
優雅なたたずまい。

色も、形も、雰囲気も、まったく違うのに
このふたつは同じ、サトイモ科。
粋な菖蒲と、雅な水芭蕉が
無骨に思えるサトイモ科とは
ちょっと意外な気もします。

もしかしたら、人の世も同じかもしれません。
なんとはなしに、ほっとした感覚をおぼえる人。
縁をたどっていけば、気づかされる、意外なつながり。 
直感は、齢を重ねた経験のなせる業。
ますます冴えてくるかもしれません。



【菖蒲重】
 
菖蒲にちなみ、花穂をあらわす菜種色(黄色)と、葉
をあらわす萌黄色(緑)による配色です。お菓子でい
えば、きんとんの2色にあたります。かさねの色目と
いっても菖蒲重は、重ね着で見せるのではなく、布の
表地と裏地であわらす配色。『源氏物語』に「菖蒲襲
のあこめ」として登場する、いにしえの色あわせです。





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