かんぞういろ − 萱草色
憂い忘れる花の色
あれは、まだ幼い頃。
陽射しがたっぷり注ぐ窓辺で
はじめて知った「枇杷」の味。
長崎の親戚の家でのことでした。
母が皮をむき、さしだしてくれた実は
果汁がしたたるほどみずみずしく、ぷっくり。
ころころと転がっていかないように
小さくひと口、ひと口、食べすすめた覚えがあります。
甘すぎるわけでも、酸味があるわけでもなく
それほど主張が強くないのに
なぜか鮮明な記憶として残っているのは
この色のせいかもしれません。
現代では、気分を明るくする色として好まれていますが
かつて万葉集の頃には、憂いが晴れる花として
源氏物語の頃には、喪に服すときの色として
身につけられたもの。
凶事の色であるとともに
負の気分をいやす色でもあったようです。
その当時から
カラーセラピーの効果を見出していたとは。
和の色も、なかなかのものですね。
【萱草色】
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赤みのある橙色。萱草の花の色です。梅雨から夏に
かけて咲くユリに似た花で、古名を忘れ草といいま す。青紫の小花を咲かせる忘れな草とは異なり、ヤ マユリのような橙色の花。ちなみに枇杷に関わりの ある、枇杷茶は果皮が茶がかった色になります。 |